この章の内容
学習目標
- 回路図のワイヤ、制御、測定、時間順序を読める。
- 線形性から複製不可能定理を説明できる。
- テレポーテーションを、量子もつれと2古典ビットを使うプロトコルとして追跡できる。
- テレポーテーションと超密符号化を、誇張せず比較できる。
アリス、プロトコル鉄道へ進む
前章では、2本のワイヤが1つの結合状態を共有できることを学びました。ここでは、そのワイヤが回路へ伸びます。回路図は粒子が管を流れる絵ではありません。状態発展、古典的な結果、条件つき操作を順序立てて書いた手順です。
前提の復習
H と CNOT が を作ること、測定が確率的であること、理想回路のゲートがユニタリであることを使います。この章では、それらをプロトコルとして読むための約束を加えます。
回路記法
多くの回路図は左から右へ読みます。水平線は量子ビットの時間発展を表します。箱はゲート、制御点と標的を結ぶ線は制御操作、メーター記号は古典ビットを生む測定を表します。
2量子ビット回路で1つ目に H を作用させる操作は です。1つ目を制御、2つ目を標的とする CNOT は4次元のユニタリです。積を取るとベル状態が準備されます。
複製不可能定理
古典ファイルはコピーできます。しかし、任意の未知の量子状態はコピーできません。もし万能な物理コピー操作が存在するなら、固定された空白レジスタや環境まで含めても線形性を保つ必要があります。理想的な閉鎖系として、その作用をユニタリ で
が任意の で成り立つと仮定します。特に
です。すると線形性により
でなければなりません。しかし、 を2つコピーした状態は
です。両者は異なります。これが複製不可能定理の直感です。既知の を何度も準備することは禁じていません。禁じているのは、任意の未知入力を完全コピーする万能操作です。
テレポーテーション
量子テレポーテーションは、共有ベル対、ベル基底測定、2つの古典ビット、補正操作を使って未知の量子ビット状態を転送します。物質を瞬間移動させるわけでも、超光速通信をするわけでもありません。
Alice が を Bob に送りたいとします。まず2人は を共有します。Alice は未知状態と自分のベル対半分に対してベル測定を行います。結果は2つの古典ビットです。Bob はそれに応じて , , , のいずれかを作用させます。補正後、Bob の量子ビットは になります。
標準的な回路の1つでは、入力量子ビットを制御、Alice 側のベル対量子ビットを標的として CNOT を行い、入力へ H を適用してから両方を Z 基底測定します。その順で記録したビットを とすれば、Bob は を適用できます。図によって古典ビットの名前や順序が異なるため、補正表は規約と一緒に示して初めて意味を持ちます。両補正が必要な場合、 と の違いは補正後状態の観測不能な大域位相だけです。
- 1
未知状態と共有ベル対
- 2
Alice 側2量子ビットのベル測定
- 3
2つの古典ビットを Bob へ送る
- 4
Bob が I, X, Z, XZ のいずれかを作用させる
- 5
Bob が元の状態を持つ。Alice 側の元状態は残らない
Alice の元状態は測定で消費されるため、複製不可能定理は破られません。
超密符号化
超密符号化は、資源の使い方が逆向きです。共有ベル対があらかじめあるとき、Alice は自分の量子ビットに , , , のいずれかを作用させて2古典ビットを符号化し、その量子ビットを Bob に送ります。Bob はベル基底測定で2ビットを復元します。
孤立した1量子ビットだけで2ビットを送っているわけではありません。事前共有されたもつれと、送信された1量子ビットを合わせて使っています。教科書的な説明はベル対、ゲート、通信路、ベル測定が理想的に動くと仮定します。物理実装では、もつれ配布、損失、ノイズ、復号誤りも数える必要があります。
計算例: のテレポーテーション
ベル測定記録を とします。上の規約では、補正前の Bob の状態は です。 を適用すると に戻ります。Alice が入力振幅を知る必要はなく、Bob は古典ビットが届くまで復元を完了できません。
よくある誤解
ガイド付き演習
テレポーテーションについて の4行の表を作り、 を評価します。次に超密符号化の資源台帳を作ります。メッセージ前に準備するもの、通信路を物理的に通るもの、Bob の測定、消費される資源を記録してください。
章末評価
小さな回路を読み、複製不可能定理を線形性から説明し、テレポーテーションまたは超密符号化を正しい資源計算で説明できるようにしましょう。
理解度チェック
まとめ
次の一歩
プロトコルを操作ごと、資源ごとに監査できるようになりました。第7章では、この回路技能を使い、明確に定義された計算問題へ干渉で答えるオラクル・アルゴリズムを構築します。
参考文献と発展学習
- Charles H. Bennett et al., "Teleporting an Unknown Quantum State via Dual Classical and Einstein-Podolsky-Rosen Channels".
- Michael A. Nielsen and Isaac L. Chuang, Quantum Computation and Quantum Information.
- IBM Quantum Learning, Quantum teleportation および Superdense coding.
章の演習
この章の内容を、短い対話型演習で練習します。
回路読解室
ワイヤ、制御、測定、時間順序を正しく読む。
ヒント
鉄道の時刻表
アリスは回路を左から右へ読む。案内人は出力を隠し、「メーターが鳴る前に何が起きたか」と尋ねる。
複製不可能の分岐点
線形性から、任意の未知状態をコピーできない理由を見る。
線形性のテスト
|0> と |1> をコピーする機械は、線形性により |+>|0> を (|00>+|11>)/sqrt(2) に写します。しかし |+> の2コピーは (|00>+|01>+|10>+|11>)/2 です。
テレポーテーション中継
ベル測定、2つの古典ビット、補正ゲートを追う。
ヒント
中継駅
アリスは未知状態をコピーできない。そこでベル対と古典的な中継を使う。
第6章 評価
回路記法、複製不可能定理、テレポーテーション、超密符号化を統合する。
ヒント
回路順序の追跡
交換しないゲート順序を、状態を段階的に発展させて比較する。
2つの運行表
Alice は、同じゲートを逆順に並べた2つの単一量子ビット回路を比較します。
ヒント
回路は入力から出力へ読みます。 のような行列積では、右端の行列から作用します。
テレポーテーション補正表
明示した規約の下でベル測定ビットを Bob の補正へ対応づける。
補正指令所
Alice の第1ビットを CNOT と H の後の入力量子ビットの Z 測定、第2ビットをベル対側量子ビットの Z 測定とする規約を使います。
ヒント
この規約では Bob は を適用します。両ビットが1のとき、行列順序の違いは物理的に無関係な大域位相だけです。
超密符号化の資源台帳
共有ベル対、送信量子ビット、復元される古典ビットを数える。
資源台帳
駅は標語だけでは通しません。Alice は超密符号化で使う全資源を列挙します。
ヒント
メッセージより前に準備された資源と、符号化後に送信される系を分けて考えます。
プロトコル資源監査
テレポーテーション、複製、超密符号化の不完全な主張を修正する。
プロトコル監査官
「テレポーテーションは量子ビットを無料で瞬時に複製する」という製品説明を Alice が監査します。
ヒント
目的、消費するもつれ、古典または量子通信、完了時刻、入力が残るかを確認します。
章の完了
完了した演習: 0/8
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